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2026年02月10日
原状回復ってどこまでやるの?〜トラブルを防ぐために知っておきたいこと〜
もうすぐ春の引越しシーズンです。進学・就職など行き先が決まっている方は、すでに引越し先を探している方も多いでしょう。不動産管理会社や不動産オーナー様にとっては、入退去が多く慌ただしいシーズンでもあります。
しかし、退去時にトラブルがあったという話もよく聞かれます。きれいに使っていたから入居時の敷金がいくらか戻ってくると思ったら来なかった。逆に敷金では賄えなかった分の原状回復費用を請求された!など、実際に引越し時に経験したことがある方もいるのではないでしょうか?内装工事やハウスクリーニングの費用などは一般の方には相場がわからないため、金額が妥当なのか判断がつきにくいものです。
原状回復ガイドラインとは
このような原状回復にまつわるトラブルを防ぐため、国土交通省は1998年に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を策定しました。ガイドラインでは、「原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の 減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
しかし、何が「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」にあたるのか、解釈が分かれる場合もあるでしょう。借主が「通常の使用の範囲」と思っていても、貸主から見たらそうではない、という場合、原状回復の費用が請求されることになります。「どこまでが通常使用の範囲なのか」という認識を、双方で合わせる必要があります。その具体的な例や基準が、ガイドラインには記載されています。
実際にあった様々な事例が示され、「どういう場合にはどちらの負担になるのか」といった具体例が掲載されていますので、貸主・借主双方がガイドラインに目を通し、共通の認識を持っておくことが望ましいといえます。
また2017年に、不動産契約に関する内容を含む民法の一部が改正され、2020年4月より施行されています。改正により「経年劣化・通常使用による変化・借主の責任ではない損傷などについては、賃借人に原状回復義務はない」との文言が民法第621条で明記されました。
つまり、入居者が常識的に使用した結果の「通常損耗」や「経年劣化」による汚れや傷は、入居者が負担すべき原状回復には含まれないのです。
原状回復でトラブルになりやすいケースは
原状回復に関するトラブルは、長引けば訴訟になることもあります。そのようなトラブルを防ぐためには、ガイドラインをしっかり読んで「こういう場合はどちらの負担」と頭に入れておくことが理想です。とはいえ、約170ページもあるガイドラインをすべて読み込むのは至難の業です。ここでは、退去の際に起こりやすいトラブルの例をいくつかご紹介します。
ケース1. 壁紙の汚れや日焼け
テレビ裏の電気ヤケや、日光による日焼け・変色は経年劣化とみなされ、貸主負担となります。ただし、禁煙の部屋でタバコを吸ってヤニ汚れが付いた場合や、子どもが壁に落書きをした場合などは、通常の使用を超えるものとして借主の負担となります。
また画鋲やピンの小さい穴程度であれば、通常の使用範囲として貸主負担とされるのが一般的ですが、釘やねじによる大きな穴や引っ越し作業で生じたひっかき傷などは、通常損耗とはみなされないことが多いため借主の負担となります。
ケース2. 床の傷や家具の設置跡
ベッドやソファ、冷蔵庫などの大型家具を設置したことによる床のへこみや跡は、生活する上で避けられない「通常損耗」として扱われ、貸主の負担となります。しかし、キャスター付きの椅子などで床に広範囲の傷をつけたり、重いものを落としてフローリングをえぐってしまったりした場合は、借主の過失とみなされ、その補修費用は借主負担となる可能性が高いです。同様に、ペットによる建具の傷や床のシミ、強い臭気なども通常使用を超える損耗として借主負担になり得ます。
ケース3. 借主の身に覚えのない損傷
退去の際に壁の損傷が見つかり、借主に原状回復費用を請求した。しかし、借主は「身に覚えがない」「自分の不注意のせいで生じた損傷ではない」と主張し、トラブルに発展するケースは多々あります。このようなトラブルを回避するためには、入居時点での損傷の有無をはっきりさせておく必要があります。入居の際に、借主と一緒に物件の状態を確認し、認識を共有したうえでサインをしてもらうのがベスト。その際、写真や動画で入居前の状態を記録しておくとなお良いでしょう。
まとめ
貸主となるオーナー様には、賃貸借契約に基づいて、借主が負担するべき損耗や故意過失による損傷と、経年劣化や通常消耗の修繕費用を明確に区別することが求められます。また借主にとっても、原状回復について理解し、契約の際に契約書の内容をよく確認することが大切です。
退去時に原状回復をめぐってトラブルになってしまうと、お互いに嫌な思いをします。双方ともにガイドラインを理解し、契約は慎重に行いましょう。



